闇金やソフト闇金の取り立てに苦しみ、弁護士への相談を検討する人は少なくない。
その中で、闇金問題を積極的に扱っている法律事務所の一つが「弁護士法人 山本綜合法律事務所」だ。
同事務所は2023年に「闇金専門相談窓口」を開設。当時の発表では、1か月で相談300件以上、債務整理200件以上が発生しているとしており、闇金問題をかなりの件数取り扱っていることが分かる。
現在公開されている料金は、
| 種類 | 着手金 |
|---|---|
| 闇金対応 | 1件39,800円(税込) |
| ソフト闇金対応 | 1件19,800円(税込) |
となっている。なお相談自体は無料であり、この金額は正式に依頼した場合の着手金である。
闇金対応を行う弁護士の料金として39,800円だけを見れば、極端に高額な料金とは言えないかもしれない。
しかし私は今回、あえて別の角度から疑問を投げかけたい。
そもそも闇金を利用するほど金銭的に困窮している人に対して、1業者につき39,800円という料金設定は本当に適切なのだろうか。
そして、その疑問をさらに大きくしているのが、私が独自に調べた「元金和解」の実態である。
闇金は元金まで返済義務が認められない場合がある

まず大前提として知っておきたいのが、闇金への返済に関する法律上の考え方だ。
2008年6月10日の最高裁判決について、金融庁は、著しく高利で貸し付けを行ったヤミ金融について、
業者は元本の返還を請求できず、借主にも元本を返還する義務がない
と整理している。
さらに借主がすでに元金や利息を支払っていた場合、その支払額全額を損害として請求できるという考え方も示された。
もちろん、これは「違法金利ならどのようなケースでも機械的にすべて同じ結論になる」という意味ではない。
金融庁自身も、この最高裁判決は年利数百%~数千%という「著しく高利」の貸付けを前提とした判断であることに注意を促している。
しかし、多くのソフト闇金で見られる極端な短期高金利を考えるうえでは無視できない判例だろう。
山本綜合法律事務所自身も「元金は返済義務がない」と説明している
興味深いのは、これは私が勝手に主張している法律論ではないということだ。
山本綜合法律事務所自身も公式サイトで、
「闇金の利息と元金は法律上返済義務がない」
という趣旨の解説を掲載している。
さらに別ページでも、闇金からの借金について民法708条の不法原因給付に触れ、「返済義務はない」と説明している。
つまり同事務所も、少なくとも一定の闇金貸付けでは「借りた元金だから必ず返さなければならない」という考え方を取っているわけではない。
ここまでは私も異論はない。
問題はここからである。
実際のソフト闇金対応を調べると「元金和解」が行われていた

今回、私は山本綜合法律事務所が介入したソフト闇金案件について独自に調査した。
その過程で、実際に依頼した利用者側だけでなく、介入を受けたソフト闇金側からも話を確認している。
そこで確認できたのが、ソフト闇金案件について、元金相当額を基準とした和解が行われているケースがあるという実態だ。
簡単に説明すると、
「今後、法外な利息は支払わない。その代わり、借り入れた元金相当額を分割で支払い、そこで終了する」
という形である。
私が特に疑問を感じたのは、利用者がそれまで業者にいくら支払ったかという問題だ。
ソフト闇金では短期間に高額な利息を取られる。
例えば3万円を借りた利用者が、それまでに利息などとしてすでに4万円、5万円、あるいはそれ以上支払っていることも珍しくない。
その状態から、さらに「元金相当額」を和解金として分割で支払うのであれば、利用者側の総支払額はさらに増えることになる。
これならソフト闇金側が和解に応じる理由も理解できる
これまで私は一つ疑問に感じていた。
なぜ、違法営業をしているソフト闇金が、弁護士が介入しただけで簡単に取り立てをやめるのか。
もちろん弁護士が介入すれば、銀行口座への対応や警察への相談など、業者にとってリスクが高まる。
それだけでも撤退する理由にはなる。
しかし、もし元金相当額を受け取れる和解であるなら、さらに説明がつきやすい。
ソフト闇金側からすれば、
「利息は諦めるが、元金相当額は分割で回収できる」
という条件になる。
取り立てを続けて警察や銀行口座への対応を受けるリスクと比較すれば、業者にとっても和解に応じるメリットがある。
だからこそ、山本綜合法律事務所が多くのソフト闇金案件を処理できている背景には、こうした「元金和解」という方法が関係しているのではないか、と私は考えている。
ただし、ここは誤解してほしくない。
元金相当額で和解すること自体を、この記事では違法だと主張しているわけではない。
嫌がらせや勤務先への電話を一刻も早く止めるため、依頼者自身が十分な説明を受けたうえで、早期解決策として一定額を支払う和解を選択するケースは考えられる。
私が問題にしているのは、その先だ。
「返済義務はない」と説明しながら元金和解をする意味
山本綜合法律事務所は公式サイトで、闇金について元本・利息の返済義務が認められない場合があることを説明している。
それなら依頼者に対して、
「法律上は元金まで返済義務が認められない可能性があります。しかし早期に取り立てを止めるため、今回は元金相当額を支払う和解を選択します」
という説明が十分にされているのだろうか。
ここは非常に重要だと思う。
なぜなら、
「元金は法律上返さなくてもよい可能性がある」と理解して和解することと、「借りた元金だけは返さなければならない」と思って和解することは全く違うからだ。
依頼者には、自分が何を放棄して何を得る和解なのかを理解したうえで判断する機会が必要だろう。
結局、相談者は二方向にお金を払うことになる

そして今回、私が最も疑問に思っている部分がここだ。
元金和解になれば、相談者はソフト闇金に対して和解金を支払う。
同時に山本綜合法律事務所にも着手金を支払う。
つまり、
ソフト闇金への和解金 + 弁護士への着手金
という二つの負担を抱えることになる。
例えば、通常の闇金5社について依頼した場合、公開料金だけで計算すると、
39,800円 × 5社 = 199,000円
になる。
これとは別に業者への和解金が発生するのであれば、実際の負担はさらに大きい。
もちろん同事務所は分割払いに対応しており、公式サイトでも「依頼者様の生活の立て直しを考慮して対応」と説明している。
しかし、分割になったから総額が安くなるわけではない。
そもそも39,800円という「相場」は誰のための相場なのか
ここでよく出てくるのが、
「闇金対応の弁護士費用として39,800円なら、相場と比較して特別高くない」
という説明だ。
確かに業界相場との比較ではそうなのかもしれない。
しかし、私はそれだけでは納得できない。
そもそも、その相場自体が闇金被害者の経済状況に見合っているのだろうか。
闇金を利用する人の多くは、お金に余裕があるから利用しているのではない。
数万円を用意できない。
正規の金融機関から借りられない。
給料日まで生活費が足りない。
他の借金の返済が迫っている。
そうした極端に資金繰りが悪化した状態だからこそ、危険だと分かっていても闇金に手を出してしまう人がいる。
その人に対して、
「相場だから1社39,800円です」
と言ったところで、本当に生活再建につながるのだろうか。
弁護士が報酬を受け取ること自体を批判しているわけではない
念のため明確にしておきたい。
私は、弁護士が闇金問題を無料で解決すべきだと言っているわけではない。
弁護士にも事務員にも人件費がかかる。
電話対応、調査、業者との交渉、書類作成、必要に応じた法的対応にも当然コストがかかる。
専門知識と労働に対して報酬を受け取ることは当然である。
私が疑問に感じているのは、
「闇金被害者救済」「生活の立て直し」を掲げるサービスとして、本当に現在の料金体系しか選択肢がないのか
という点だ。
複数業者を依頼する人への大幅な割引。
一定件数を超えた場合の定額制。
著しい困窮状態にある相談者への減免。
所得に応じた料金上限。
こうした方法がもっとあってもいいのではないだろうか。
「解決件数」だけで闇金対応の良し悪しは判断できない
山本綜合法律事務所は2023年の発表で、1か月で相談300件以上、債務整理200件以上が発生していると公表した。
これだけを見れば、非常に多くの闇金問題を解決に向けて処理している法律事務所という印象を受ける。
しかし私は、闇金問題における本当の「成功」を、単純な和解成立件数だけで評価すべきではないと思う。
重要なのは、
依頼後に相談者が最終的にいくら支払うことになったのか。
そして、
依頼前より本当に生活が楽になったのか。
という部分ではないだろうか。
業者とのトラブルが終了しても、元金相当額の分割払いが残り、さらに法律事務所への着手金も何件分も支払わなければならないのであれば、相談者の家計に新たな負担が残る。
それでも取り立てや嫌がらせから解放される価値は大きい。
だから「意味がない」と言っているわけではない。
しかし、それを「解決」の一言だけで評価してよいのかは別問題だ。
私が山本綜合法律事務所に求めたいこと
山本綜合法律事務所は公式サイトで、
「皆様の生活の立て直しを第一に考えている」
と説明している。
それなら私は、ぜひ料金についてももう一歩踏み込んでほしいと思う。
闇金を利用するほど追い詰められた人にとって、1件39,800円は決して小さな金額ではない。
5件なら約20万円になる。
しかも元金相当額で和解する案件では、業者への支払いまで残る。
そうであるなら、
一般的な「弁護士相場」に料金を合わせるのではなく、闇金被害者の現実的な支払能力に合わせて、もっと着手金を下げることはできないのだろうか。
少なくとも私は、その議論があっていいと思う。
まとめ―闇金問題の「解決」とは誰のためのものなのか
今回調べていて、最終的に私が感じた疑問はとても単純だ。
闇金やソフト闇金の問題を解決する目的は何なのだろう。
単に業者からの電話を止め、和解書を作り、案件を終了させることなのか。
それとも、闇金を利用するほど追い詰められた相談者を、本当の意味で経済的に立て直すことなのか。
著しく高利の闇金については、最高裁判決上、元本すら返還請求できないケースがある。山本綜合法律事務所自身も、公式サイトで元金・利息の返済義務が認められない場合があると説明している。
それでも実務上、早期解決のために元金相当額で和解するという選択をするのであれば、その考え方自体は理解できる。
しかしその結果、
相談者がソフト闇金にも払い、法律事務所にも払う
という形になるのであれば、法律事務所側の料金についても、より大きな配慮が必要なのではないだろうか。
「相場より安いから問題ない」。
私は、それだけでは十分な答えにならないと思う。
問題にすべきなのは弁護士業界の相場ではない。
闇金を利用するほど困窮した人が、その料金を本当に負担できるのか。そして、その人の生活再建にとって最善の解決になっているのか。
闇金被害者の救済を掲げるのであれば、私はそこまで含めて「解決」であってほしいと思う。





